まわりを霧に囲まれたまち。
建国記念日の式典が行われている。
そこへ1人の男が迷い込んでくる。
霧を抜けて別のまちからやって来たのだ。
この《霧のまち》は、浮遊し移動するまちである。
音という概念がない世界で、言語は身体だ。
独自の文化が発達し、あらゆるものが
このまちの住人に便利なようにできている。
長い年月のなかで周期的に「もうひとつのまち」に近づくが、
霧に遮られ、互いに知らない。迷い込んできた男は、
「オンガク」を伴う式典の様子に見とれる。
やがて住人3人と親しくなり、このまちで暮らすようになる。
2年が過ぎ、男は3人を「もうひとつのまち」へ誘う。
そのまちの名は《百層》。
一極集中が進み切った超高層巨大都市である。
音の文化が発達し、言語も音声である。
一方で、人口過密ゆえに騒音問題が深刻化し、
極度に静寂が求められている。
2年ぶりに戻った男は、3人にまちを案内する。
《百層》のさまざまな住人との出会いを通して、
やがて4人はコンサートに参加することになる……